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カバーアートは、ゲージュツだ!(第3回)

 今回はヒプノシスの特集です。
 ギーガー、ディーンと続けてきた以上、ヒプノシスをハズスわけにはいきません。 
 1970年代のロック・シーンに語る上で、重要なアーティストの1人です。

 1人と言いましたが…。
 ヒプノシスは、ギーガー、ディーンと違い、単体のアーティストではありません。
 写真家のストームを中心とした、アーティスト集団の名称です。

 したがって、他のアーティストとは比較にならないほど、たくさんの作品を手がけてきました。“犬も歩けば棒に当たる”ということわざがありますが、ヒプノシスについてはまさに、“名盤を見ればヒプノシスに当たる”という状態です。
 CDショップの店頭には、実に多くのヒプノシス作品が並んでいます。

 レッド・ツェッペリンの、『聖なる館』(1973年)、『プレゼンス』(1976年)。
 ピンク・フロイドの、『ウマグマ』(1969年)、『原子心母』(1970年)、『狂気』(1973年)、『炎』(1975年)。
 ジェネシスの『眩惑のブロードウェイ』(1974年)、イエスの『究極』(1977年)、ユーミン(!)の『VOYAGER』(1983年)、10cc、ウィングス、ビー・バップ・デラックス、スティーヴ・ハーレー…etc。
 そうそう、今月の“だまってコイツを聴いてくれ”のコーナーで特集した、ウィッシュボーン・アッシュの『百眼の巨人アーガス』(1972年)もヒプノシスの作品です。

 

 

ピンク・フロイドの『炎』
実際は、この上から紺色のビニールにすっぽりと被われていて、この画は見えなくなっていた。ちなみに、我が家のLPは、いまだに紺色のビニールのままである。
『炎』という邦題は、この写真(ここではよく見えないが、右側の人物が燃えている)からつけられたようだ。原題は、『Wish you were here』(あなたがここにいてほしい)。
     

 彼等は、イラストよりも写真を加工する手法を得意としています。
 非現実的なシーンを写真で表現することによって、シュールなイメージが倍増されます。そして、この世にあらざる光景を現出させてしまう。
 まさに、“ヒプノシス・マジック”と呼べるものでしょう。

 マニアックな作品の中では、トゥリーズの『オン・ザ・ショア』、『クォーターマス』の人気が高いようです。LPは、かなりの高額で取り引きされておりました。

 ちなみに、私がいちばん好きな作品は、レッド・ツェッペリンの『プレゼンス』です。
 これは、なんてことのないスナップ写真の中央に、黒いアヤシゲな物体が置かれている、というデザインです。
 インナー・スリーヴの数点のスナップ写真にも、同様の物体が必ず配置されています。
 これは、ジミー・ペイジが“オベリスク”と呼んでいるもので、アルバム・タイトルの通り、何か“抽象的だが確実に存在している普遍的なモノ”を象徴しているようです。
 この、“抽象的だが確実に存在している普遍的なモノ”というのは、もちろんレッド・ツェッペリンの音を指しているのでしょう。
 ジミー・ペイジは、このアルバムを驚異的な短期間で完成させたと言っておりますが、そこで自分達の音楽が永遠の輝きを持っていることを実感したのではないでしょうか。
 『プレゼンス』のアルバム・タイトルとカヴァー・アートには、そんなジミーの自信がみなぎっているのです。
 ここまで言いきれるバンドは、もう出てこないでしょうね。
 
 ギャラリーをお楽しみください。
 ヒプノシスでした。

 

 

 
ジェネシスの『眩惑のブロードウェイ』
ピーター・ガブリエル在籍時のジェネシスの、ラスト作にして最高傑作。当時から話題になっていたが、内容がシュールすぎて製作者以外には理解不可能なレベルであった。カヴァー・アートは、そんな内容を端的に表わしている。
 
イエスの『究極』
心機一転、従来の大作主義から方向転換を図ったイエスは、アルバム・カヴァーのイメージも変えてきた。それまでの、ファンタスティックなイラストから、リアリティをともなった非現実的なデザインへの変更は、バンドの強い決意を感じさせる。
     
   
ウィッシュボーン・アッシュの『百眼の巨人アーガス』
音も最高なら、ジャケットもサイコーである。
ビー・バップ・デラックスの『Futurama』
ヒプノシスにしては珍しい、イラストのカヴァー・アート。これは、彼等のメンバーにして、イギリスのポップ・アート集団「N.T.Aスタジオ」の一員である、ジョージ・ハーディの作品。幾何学的な作風が特徴である。
ハーディは、『狂気』に付いていたピラミッドのイラストや、『炎』に貼られていた機械の握手のシールを手がけている。横尾忠則のファンだそうだ。
ユーミンの『VOYAGER』
ここに、このアルバムが登場すること自体が、ショッキングである。
 
    レッド・ツェッペリンの『プレゼンス』
画面中央、テーブルの上にある物体が“オベリスク”。
   
 
トゥリーズの『オン・ザ・ショア』
1970年に発表された、ブリティッシュ・プログレッシヴ・フォークの名盤。長いこと廃盤になっていたが、今年になってソニーの「洋楽秘宝館」シリーズで復活。入手が容易になった。
無表情な少女が、こちらに向かって水をまいている、というシュールで不気味な画である。
『クォーターマス』
やはり1970年に発表された、オルガンを中心としたトリオによる、ヘヴィーでドラマティックな作品。
リッチー・ブラックモアがレインボー時代にカヴァーした、「黒い羊」のオリジナルが収録されている。
直線的なビルとプテラノドンの対比が不自然で、かえって刺激的である。
  このページの画像は、クレームがついたら削除します。まぁ、個人のHPなので、大目に見てやってください。カヴァー・アートの話しは、非常に興味深いのですが、規制があり過ぎて厄介です。それでも、メゲずに続けます。