帰宅した俺は、これまたセクシーなインナー・スリーブの端に、申し訳なさそうにローマ字で表記されていた、レコーディング・メンバーの名前を見て愕然とした。 Keyboards : Hiroyuki Namba 、Haruo Togashi E.Bass : Tsugutoshi Goto 、Shigeru Okazawa Drums : Shuichi Murakami、 Tatsuo Hayashi E.Guitar : Tsuyoshi Kon、 Makoto Matsushita、 Takayuki Hijikata A.Guitar : Chuei Yoshikawa …。 「こりゃ、中身も当たりかな?」 …。 10分が経過した。 俺は無言で、レコード針を上げた。 俺の耳には、1曲目のリフレインだけが残っていた。 「♪SCOOOP、SCOOOP、裏切ったのは、アナータ♪」 その通り、裏切ったのはアナタ。川島なお美ちゃんだ。 これ以後、このLPにレコード針が下りることは、2度となかったのである。俺は今までの人生で1,000枚以上のLPやCDを購入したが、“B面ヴァージン”のレコードは川島なお美の『SCOOOP!』ただ1枚だけである。しかし、このLPを中古ショップへ“出家”させることは、今日まで実現されなかったのだ。 その後このレコードは、裏ジャケットをこちらに向けて壁にディスプレイされるという、本来の目的と違う利用方法に甘んじることになったのである。 しかし、 どのような動機であれ、大枚“2,500円也”のこのアルバムが、1枚売れたことだけは確かである。売れてしまえば、売る側の勝ちである。おそらく、川島なお美の当時の人気から考えると、日本全国で数万枚はこのような買われ方をしたはずだ。俺と同様の経験をした修行の足りない男は、あなたの隣にいるかもしれない。 自主製作で数百本のカセットテープ(たったの700円)を売ることに四苦八苦していた俺は、なにやら複雑な気持ちになった。それと同時にあらためて、カバー・アートの威力を思い知ったのである。こんなレコードの買い方は、CDサイズになってしまった今日では考えられないことで、なにやら遠い昔のお話のようである。 それにしても…、 この頃のなお美ちゃんは美しかった。 このページの背景は、問題の『SCOOOP!』の裏ジャケである。俺が体験した“曼陀羅”を、みんなも味わうがよい。ちなみに表ジャケはこの通りでした。 | |