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web-magazine GYAN GYAN

 

フリースピリット/ジョニー・ルイス&チャー

FREE SPIRITJOHNNY,LOUIS&CHAR)』1979年発表)

 

 

SDE

1.Introduction

2.Wasted

3.風に吹かれてみませんか

4.Open Your Eyes

5,籠の鳥

 

SIDE

6.Natural Vibration

7.You're Like a Doll Baby

8.Shinin' you, Shinin' day

 

 Charこと竹中尚人先輩は、大田区から転校して来た、私の中学時代の友人の兄貴の、都立大崎高校の先輩にあたり、ソロデビューを果たす以前から、何かと話題になっていた人でした。

 

 いわゆる都立高校の星

 

 同じように、都立高校に通っていた私は、海外のミュージシャンほど遠くない、

身近な距離にいるアコガレの存在ということで、常にその動向を意識しておりました。

 

 そんなCharが、歌謡曲の世界で活躍し、我々に軽い失望感を抱かせた後、いくつかのトラブルに巻き込まれ、「もう、復帰は無理かな?」と思わせるようになっていた時期に、どうやらトリオで再起を図るようだ、というニュースが入ってきました。

 私が高校3年の春、1979年のことでした。

 

 それはちょうど、スタンリー・クラークを連れた、ジェフ・ベックの来日公演を見た直後、私が、エキセントリックなテクニシャンを目指すことに挫折し、16ビート系のリズムに関心を持ち始めた時期でした。

 

 野音で無料ライブをやるらしい

 そんな噂が聞こえてきたのは、その年の7月に入ってからのことでした。

 

 何をおいても見に行かねば

 ところが、あいにくライブ前夜から雨模様で、しかも当日はたいへんな大雨になってしまい、雨が降ると学校を休むと言われていた私は、あっさりとこのライブをスッポかしてしまいました。

 

 だって、野外なんだもん。(ドタキャンの悪い癖はこの頃からのようです。)

 

 しかし、ライブ直後から、このときの演奏のスゴさが話題になり、私はこのときのことを、それから長いこと後悔するようになります。

 

 さらに、Charだけでなく、相方の二人にも注目が集まるようになり、ジョニー吉長、ルイズルイス加部という日本ロック界が誇る存在を知り、私は、いままで海外ばかりに目を向けていた自分を、少しばかり反省することになるのです。

 

 そして、ライブを見に行かなかった、私のフラストレーションを吹き飛ばすかのように、秋になり発表されたのが、そのときのライブを元に制作された、ジョニー・ルイス&チャーのデビューアルバム、『フリースピリット』でした。

 

 これは正直、LPが擦り切れるほど聴いた1枚です。

 

 以前からCharは、日本人離れしたセンスが評価されていましたが、このアルバムでは、歌謡曲の世界を吹っ切ったせいか、さらにそれが強く出ており、英詞の曲については、日本人の作品であるとは思えないほどです。

 

 またCharは、ブルースよりも、ソウルやファンク色が強いことで有名でしたが、それがこの作品全体にも表れており、どことなくオシャレな雰囲気を作り上げております。

 

 ソウルやファンクで使うコードやカッティングをハードロック的な展開に持ち込んだ、「Wasted」や「You're Like a Doll Baby」の、文章で表現できないほどのカッコよさ。

 

 ソロ時代からお気に入りだった、「Shinin' you, Shinin' day」で、金子マリがデュエットでカラむあたりの、鳥肌モノの美しさ。

 

 日本語の歌詞の、「風に吹かれてみませんか」と「籠の鳥」の出来も素晴らしく、どちらもCharのキャリアにおいて、トップクラスの作品といえるでしょう。

 とくに、「風に吹かれてみませんか」は、日本語によるメロウソウルの傑作で、今でも、というか今だから、ときどき聴きたくなる、私のフェイバリット・ソングのひとつになっています。

 

 16ビート系のリズムに関心を持ち始めていた当時の私にとって、『フリースピリット』に収録されているCharのギターは、これ以上ないほど魅力的であり、とにかく、そのすべてを、丸ごと自分で身に付けようと思ったほどでした。

 そして私は、このアルバムの全曲コピーを決心し、数ヶ月後にそれを果たすのです。(余談ですが、このとき、よほどしっかりやったおかげか、今でも、ほぼ完奏することができます。)

 

 さらにこの後、LOOSE CONNECTIONの前身に当たるバンドで、数曲をレパートリーにするなどして、『フリースピリット』は少しずつ、私の血肉と化していくのです。

 

 私はこれ以降、リードギターよりもむしろ、コードカッティングやアルペジオといった、バッキングの部分でセンスを磨く方がであると考えるようになり、普通のコードを普通に押さえるのでなく、ひとひねりしたコードを、普通でない押さえ方で押さえることに、ギタリストとしての快感を感じるようになりました。

 ギタリストにしかできない和音の捉え方を知ったのです。

 

 そういう意味で、『フリースピリット』は、私のギタリストとしてのキャリアにおいて、大きなターニングポイントになったアルバムといえます。

 これを聴いたことが、今の自分を築いたと言っても過言ではないでしょう。

 

(初出:ブログ「ROCKのある風景」2008.12.21)