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白いレガッタ/ポリス

REGATTA DE BLANCTHE POLICE)』1979年発表)

 

 

 

 

SDE

1.孤独のメッセージ(Message In A Bottle

2.白いレガッタ(Regatta De Blanc

3.イッツ・オールライト・フォー・ユー(It's Alright For You

4.ブリング・オン・ザ・ナイト(Bring On The Night

5.死の誘惑(Deathwish

 

SIDE

6.ウォーキング・オン・ザ・ムーン(Walking On The Moon

7.オン・エニイ・アザー・デイ(On Any Other Day

8.ひとりぼっちの夜(The Bet's Too Big Without You

9.コンタクト(Contact

ダズ・エブリワン・ステア(Does Everyone Stare

ノー・タイム・ディス・タイム(No Time This Time

 

 JOHNNY,LOUIS&CHARがデビューした1979年のことです。ミョーな曲がヒットチャートの上位にランクインされました。

 

 その曲は、祭り囃子みたいなリズムと、ちょっと哀愁のただようアルペジオのイントロで始まり、スカスカで隙間だらけの空間に、アタマから抜けるようなハイトーンのヴォーカルが印象的でした。

 

 それが、ポリスの「孤独のメッセージ」。

 

 いままで聴いたことのない、新しいサウンドとの出会いでした。

 

 私は当初、彼らのルックスを見て、パンクロック系のグループだと勘違いしましたが、ポリスのデビューは、パンクロック以降のニューウェイブシーンの幕開けだったのです。

 

 私が注目したのは、まずリズム面の斬新なアプローチ。

 ポリスは、レゲエやスカといった最先端のリズムと、従来のロックンロールの融合を図りました。

 これは「孤独のメッセージ」や、それ以前の曲、「ロクサーヌ」、「キャント・スタンド・ルージング・ユー」などで使われているパターン。

 スネアをあまり強調しないので、祭り囃子のように聴こえるのです。

 

 そして次に、「孤独のメッセージ」につづいてシングルカットされた、「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」で聴かれる、極端に音の密度を少なくすることで、逆に空間的な広がりを生み出す効果。

 この曲では、イントロのジャキーンという、D sus4のコードにディレイをかけているのですが、後ろに音がほとんどない状態なので、その効果は絶大です。

 

 このように、まったく音が出ていない空間をうまくコントロールするには、じつはトリオという編成が最適です。

 ポリスは、クリームのように、演奏者同士が技術的に競い合い、音を埋め尽くすことをしないトリオだったのです。

 音が少ないというトリオのウィークポイントを、逆にセールスポイントにしてしまったのです。

 トリオなのにリードギターを弾きまくらないのです。(笑)

 

 これはおもしろい。私は「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」を聴いて、ついにアルバムを買う決心をしました。

 それがポリスにとって2枚目のアルバムになる、「白いレガッタ」でした。

 結果として、私のギタープレイに決定的な影響を及ぼした1枚となったのです。

 

 前述の「孤独のメッセージ」が優れたナンバーであることは、あらためて言うまでもありません。

 音を採り始めたところ、9thを使ったアルペジオであることが判明したのですが、それは指が長くないと出来ないプレイで、アンディ・サマーズは小柄な割には指が長いのか?などと変な所に感心した記憶があります。

 

 「キャント・スタンド・ルージング・ユー」の間奏を発展させた、「白いレガッタ」は私がもっとも好きなナンバーです。

 予定調和とアドリブ、無音の空間とバンドが一体となって疾走する瞬間が見事なバランスを取っており、この曲にポリスサウンドが凝縮されていると言っても過言ではないでしょう。

 

 「イッツ・オールライト・フォー・ユー」は、彼らにしては珍しく、ストレートなビートのロックンロールで、単純に心地よい、とってもイカしたナンバー。

 

 「ブリング・オン・ザ・ナイト」は、「孤独のメッセージ」同様、マイナーなアルペジオとレゲエの融合が新鮮なナンバーですが、一方で、スティングのベースが、モロにレゲエのフレーズになっているところがおもしろい。

 

 「死の誘惑」は、「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」同様、ギターのカッティングにディレイをかけて、不思議な音空間を生み出すことに成功しています。

 この曲のようなリズムに合わせた残響は、デジタルディレイだからこそできる技であり、ポリスが、テクノロジーの進化もうまく使っているグループであることがわかります。

 

 このアルバムはとにかく、LP時代のA面の出来が素晴らしく、何回聴いても厭きません。

 それに反して、B面はそれほどでもなく、前述の「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」以外は、それほど聴きこんだ記憶がありません。

 まぁ…頻度とすると、A面10回に対してB面1回ぐらいの割合だったでしょうか。

 

 私はアンディ・サマーズの、ニュアンスに富んだコードの使い方、カッティングやアルペジオを中心として、あまりリードギターを弾かないプレイに魅了されました。

 また、以前からたいへん好んでいた、エコー系エフェクターの進化系、デジタル・ディレイの威力を知り、テープエコーやアナログ・ディレイと使い分けることを覚えました。

 

 そして、なによりも私は、このアルバム全体で聴ける、コードを弾き流したときに「シャラ~ン」という独特の音揺れを生み出す、モジュレーション系エフェクターのサウンドに魅了されました。

 アンディ・サマーズは、コーラスではなくフランジャーをコーラスのようにセッティングして使っていたということですが、私は当時話題になっていた、「BOSS CE-1」というエフェックターに興味を持ち、数年後に購入することになります。

 そしてそれ以降、私の足元には、エコー系のエフェクターとともに、必ずコーラスがセットされるようになるのです。

 

 1980年前後、ロックが大きく変化しようとしていた時期、私のギタースタイルも大きく変化しようとしていました。

 

(初出:ブログ「ROCKのある風景」2009.2.8)