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たたかふ、ちうねんろっかぁ
第5話「そして、再生は破壊の後に生まれた」

 ついに完成型に到達したものの、崩壊寸前の状態まで追い詰められてしまった、LOOSE CONNECTION。そこで俺が試みた、意外な脱出手段とは…?

 それは、バンドに新しいメンバーを参加させること、だった。

 俺のギターは、どちらかというと、リフをキメたり、コードカッティングやアルペジオといったプレイで本領を発揮する、バンドサウンドの骨格作りを担当している。これはおそらく、キース・リチャーズやピート・タウンゼントのプレイが、俺のDNAに強く焼き付けられていることによるものだろう。俺は、そんな自分のプレイをよく自覚していたので、かねてよりバンドにもう1人、装飾的な音を出すメロディ楽器を加えることを望んでいた。しかし、それはずっと実現しなかった。そして、4人編成でやれることを探究した結果が、現在のバンドのスタイルになっていたといえる。
 そんな俺の目の前に、1人の男が現れた。

 showtaroさんである。

 showtaroさんと俺は一時期、同じ会社で働いていた。俺はshowtaroさんの存在は知っていたが、この人がプロミュージシャンという過去を持っているとは思いもしなかった。同じ部署に所属している同僚にこのことを教えられ、showtaroさんと会話をする機会を持たなければ、生涯知り合うことはなかったかもしれない。
 とにかく、俺はshowtaroさんと知己になった。

 showtaroさんは、バンドの最年長であったmarcさんよりも年上で、かつては米軍基地やディスコを中心に活動をしていた経験を持つ、キーボード・プレイヤーである。
 ハモンドオルガンをこよなく愛し、ブルースやソウルといったブラック・ミュージックに傾倒する彼は、キーボード・プレイヤーには珍しく“プログレ嫌い”であった。

 俺は、showtaroさんの“プログレ嫌い”という点に興味を持った。
 きっと、白玉で音を埋め尽くすようなプレイはしないんだろうなぁ…。
 とすると、我々にピッタリのミュージシャンであるといえる。
 LOOSE CONNECTIONは、スカスカで隙間だらけの音だが、その隙間がないと独特のサウンドが成立しない。俺は、音のない空間をコントロールすることこそが、バンドサウンドの妙技であると信じている。

 showtaroさんの過去の録音は、俺のこの予想が正しかったことを証明してくれた。
 そして、showtaroさんもLOOSE CONNECTIONの録音を聴き、参加の意向を申し出てくれた。

 これが、2005年の秋頃のこと…。

 しかしこの時期、LOOSE CONNECTIONは3発のライブを控えており、showtaroさんは参加するタイミングを失った。そこで俺は、LOOSE CONNECTIONがこのまま行くなら、彼とは別のユニットを組むことすら考えた。
 ところが、2005年の年末に至って、バンドがshowtaroさんを必要とした。

 2006年1月、showtaroさんはついにLOOSE CONNECTIONに参加した。

 オルガンやピアノを得意とするshowtaroさんのプレイは、我々に深い感銘を与えた。俺はこれで、いままでできなかったことや、無理にやっていたことが楽にできるようになるのではないだろうか?と思うようになった。
 ただし、“今までの音+showtaroさん”にはしたくない。
 あくまでも、彼を加えた5人編成の音を新しく構築したい。

 俺達は、これまで構築してきた音を破壊することを始めた。
 もう一度、バンドを結成した時と同じように、白紙の状態からあらゆる音を試みた。

 まず俺は、トリオまたはトリオ+ヴォーカルという編成のバンドを長く続けていたので、自分のプレイスタイルを変える必要があった。
 今までのように、“全部弾く”必要がなくなったのだ。
 ギターとキーボードのハーモニーから、最終的にバンドのハーモニーを作ればいい。ギターが必要な部分だけ音を出せばいい。これは、言葉にすると簡単だが、実際には少しばかりの慣れと、ある程度の理論に基づいた和音のセンスが必要とされる。俺は、根気強くこの作業に取り組んだ。

 さらに…、
 showtaroさんはキーボードだけでなく、メインヴォーカルとして通用する歌唱力も持っていた。そこで、今まで決してできなかった、“ヴォーカル・ハーモニー”を作ることが実現した。
 marc+showtaroさんだけでなく、俺を加えた3声ハーモニー…。俺はshowtaroさんから、簡単なヴォイストレーニングを受けた。俺はどうも歌が苦手であったが、少しずつ声を出し始めることでその意識を克服しようとした。

 そんな中…、
 6月にベーシストITOが結婚した。
 ITOの結婚式の2次会で、5人編成のLOOSE CONNECTIONは演奏する機会を得た。
 
 この日のLOOSE CONNECTIONは、「世界の鎮魂歌」や「青い影」といったイベント的な選曲を始め、「REAL LOVE?」や「 I'VE GOT A FEVER」といったオリジナル曲を演奏した。まだまだ、4人編成+キーボードの域は出ていなかったが、それでも…。
 確実に、何かが変わろうとしていた。

 夏が過ぎ秋が訪れた…。
 昨年同様、年の後半にはライブを連発したかったが、なぜかメンバーの予定が合わず、計画はすべて見送りになった。
 それでもいい。今は1、2本ライブをやったからといってどうなるものでもない、あせらずじっくり音を作ればいいじゃないか…。

 俺達はおよそ1年の歳月をかけて、5人編成の音を作り上げた。

 12月。
 恒例になった、年末の『吉祥寺・曼陀羅2(中央大学軽音楽同好会OB・忘年会)』がまたやって来た。今回が5度目の出演である。
 新生LOOSE CONNECTIONはついに、公式デビューを果たした。

 

 

 

↓左からITO、matsuZACK、SHIBA、marc、showtaro(2006/12/9)
↑showtaroさんの鍵盤は、普通の床置きタイプである(!)
date: 2006.12.9(土)
place:「吉祥寺 曼陀羅2」
1, LET'S SPEND THE NIGHT TOGETHER(THE ROLLING STONES/初演)
2, JOB SKIPPER(オリジナル/新曲)
3, KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR(BOB DYLAN/初演)
4, SYMPATHY FOR THE DEVIL(THE ROLLING STONES/初演)

 「LET'S SPEND THE NIGHT TOGETHER」は、ストーンズのオリジナルテイクではなく、デヴィッド・ボウイのカバーヴァージョンを採用した。俺の、キース・リチャーズ直系のルーズなコードカッティングの上に、showtaroさんのきらめくようなピアノが音をちりばめる…。新生LOOSE CONNECTIONサウンドを象徴するオープニングナンバーである。
 「JOB SKIPPER」は、この編成によるオリジナル曲の第1号である。
 俺は、キース・リチャーズ得意の5弦ギターのコードパターンを、6弦のノーマルチューニングにアレンジしてこのリフを作った。そして、showtaroさんのハモンドオルガンとブレンドすることで、絶妙のハーモニーを作り出すことに成功した。
 showtaroさんはこの日のステージで、キーボードをスタンドからはずし、抱えて走り回りながらオルガンソロを弾いた。
 狂乱のパフォーマンスであった。
 観客は相当な衝撃を受けたようであったが、我々も驚いた。
 showtaroさんは、ライブパフォーマンスも凄かったのだ。
 「KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR」は、ガンズ等がカバーしている有名曲だが、我々のアレンジはまったくのオリジナルで、そのどれにも似ていない。
 そして、この曲で例の3声ハーモニーによるコーラスパートが披露された。
 ファンキーなアレンジを施した「SYMPATHY FOR THE DEVIL」は、marcとshowtaroさんのピアノの掛け合いから始まり、後半はハードに展開する大作である。
 この日のステージでmarcは、観客に「フッ、フーッ」というリフを歌わせるという、ライブならではのパフォーマンスを使ってステージの終盤を盛り上げた。それは、今までの我々のステージでは、決して見ることのできなかった光景であった。

 曲数が少ないのは出演時間が短かかったからではない、2曲目以降が1曲平均7分程度の演奏だったからだ。
 
 決めごととハプニング、アドリブに対する柔軟な対応、硬と軟のバランス、演奏と歌の比重…。
 LOOSE CONNECTIONは、相反する要素を微妙なバランス感覚でブレンドしながら、より強靱で幅広い音楽性を提示し、見事に復活した。

 すべてが初公開であった。
 そしてそれは、観客に熱狂的に受け入れられた。

 余談だが…、
 実は、このセットにもう1曲オリジナルの新曲を加えたものが、この編成による最初のライブコンセプトである。持ち時間があと5分あれば、この日にすべてを披露することができたのだが、それは実現しなかった。メンバーは早い時期に、フルヴァージョンを完奏したがっている。
 したがって、このコンセプトを体験したい方には、我々の2007年最初のライブに足を運ぶことをオススメする次第である。

 さて、我々はこの後どこへ行くのだろうか?
 それはきっと、誰にもわからないことだろう。

 

 

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marcが、DVDから画像を作成しました。